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-これって自分にツッコミ日記じゃんと思う今日この頃-
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暦の上でも春を迎え、暖かくなった風が頬を撫ぜる。
3月初日、少女はついに高校卒業を迎えた。


「―――ね、あの人カッコ良くない?」
「誰を待っているのかしら。」

「…?」
周りで騒ぐ同級生達に倣って 彼女も顔を上げる。
みんなの視線は校門前のただ一点にのみ集中していた。
(あ、……)
そこには花束を片手に佇む一人の青年。
知っている、覚えている。懐かしい記憶の中の彼の姿のまま彼はそこにいて。
同時に、彼女の前にただ一度だけ現れた別れの日の、彼の悲しげな表情が浮かんだ。
誰に会いに来たのだろう。…誰に、その花を渡すのだろう。
逸らせずじっと彼を見ていたら ぴたりと彼の視線がこっちを向いて止まる。
嘘、と思った瞬間に、彼の足が動いた。


「卒業おめでとう。」
差し出された花束に一番驚いたのは彼女だ。
淡い色で統一された大きなそれには、自分を主張するように一本の"百合"が咲き誇っている。
間違いなく彼女のために用意されたものだ。
「…ありがとう、ございマス…」
戸惑いつつも受け取ると、彼は嬉しそうに笑う。
最後に見た悲しい顔しか覚えてないから そんな風に笑ってくれてほっとした。
「あんなに小さかった君がこんな美人になるとは思わなかった。知っていたら手放さなかったのに。」

「―――嘘。私がもし忘れなくてもだいすけは手を離したよ。」
「え……」
くすりと笑うと彼は驚いた顔をして。
空いた手で彼の手を握るとますます驚いて目を見開いた。
「あの後お母さんに教えてもらったよ。"だいすけ"は記憶がない私をずっと守っていてくれたんだって。とっても優しい人なんだって。」

彼と過ごした記憶を思い出してはいない。
でも時折見る、大きな手を自分が掴んで笑っている幸せな夢。
私はその人が大好きだった。

「記憶はなくてもこの手の温かさは覚えているよ、ちゃんと。」
あぁ、この手だ。
取り戻した手があまりに懐かしくて なんだかとても嬉しくて、思わず泣きそうになる。
すると握り返されない手が そっと離れそうな気配がした。
「…手を 離さないでね。」
その言葉にびくりと彼の手が反応する。
「お願い、だいすけ…」
この温もりをまた失うことが怖かった。離れたらもう2度と会えない気がして、それが嫌だった。
記憶は失っても心は彼を覚えていたのかもしれない。


その時、ふと身体が浮いたような感覚がした。

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臨採の保健室在中者
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マンガ大好き、寝るのも大好き。
基本はめんどくさがりです。

注意:
以前の日記と同じスタンスなので、ヲタも仕事も日常もごちゃ混ぜです。
真面目な検索で来られた方はスミマセン…(汗)

ヲタ歴:
封神でこちらの世界に入り込み、ガンダムSEEDにはまりまくり、現在は狼陛下も大好きです☆
時々サイトで二次小説を書き散らかしてます。
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